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 経営は競争である
戦略とは、医院を際立たせる方法論のことで、「誰」を対象にして「何」を売りにして「どのような」方法で、ライバルとの「違い」を生み出していくのかを考えることです。

どんな市場にも競争相手が多数いて、顧客を取り合っています。たとえば、先生方も、百貨店へ買い物に行こうとするとき、複数ある中から一つを選んでいるでしょう。それと同じです。先生の医院も競争相手と患者さんの争奪戦をしているのです。これは競争以外の何物でもありません。

経営は競争であると捉えると、負けることは許されません。ではどうすれば勝てるのか。競争の原理を知ることで、「勝つ方法」を導き出すことができるのです。競争の原理とは「競争領域における自院と競争相手との力の優劣によって勝負が決する」ということです。つまり、強いものが勝つということ。当たり前のことですが、実は深い意味を持っているのです。

競争領域における力の優劣ということは、全体の力ではないということです。全体として大きくても、その競争領域の力が劣っていたら負けるのです。逆に、全体としては小さくても、その領域での力が優っていたら勝てるということです。つまり、競争相手に比べて規模が小さな歯科医院でも勝つ方法があるということを意味します。その方法を理論化したものが戦略です。

 戦略を構築する第一歩は環境を知ること
戦略を構築する第一歩は、医院独自の強みをしっかりと把握することです。そのためには、まず自院を取り巻く環境を「市場」「競争相手」「自院」という3つの視点から正しく分析することが求められます。

 1.現在の市場を分析する
歯科医院経営は、基本的に同一診療圏内に存在する他院との競争ですから、自院が対象とする市場を調査することは基本中の基本です。

日本は、すでに人口減少時代に突入したので、市場そのものが縮小傾向にあります。これは、生き残る歯科医院数が減っていくことを意味します。

したがって、現在の診療圏を念入りに調査して、例えば需要が多いにも関わらず、供給が少ないといった市場の弱い部分、あるいは空洞化された部分を見つけ出すことで、市場で比較的に成功しやすい領域を確認しておくことが有効です。

 2.市場の競争相手を調査する
市場を分析した後は、競争相手を特定し調査を行います。競争相手はどういった強みを持っているのか、逆にどんな弱みがあるのかを浮き彫りにします。競争相手を把握する必要性は、相手が得意とする土俵ではなく、自院が得意とする土俵を見つけるため。

競争が激しい市場では、自院の強みを有効に活用できない限り、競争相手に勝つことは出来ません。そして、最も勝ちやすいと思われる分野に、最大限の資源を投資しなければならないのです。

 3.自院の強みと弱みを把握する
自院の強みをうまく活かして、ライバルの弱みを突くために、自院の強みと弱みをしっかりと把握しておくことが必要なことは言うまでもありません。

 戦略を構築するための具体的なステップ
医院独自の強みが明確になったら、その強みで医院を際立たせる為の戦略を構築することが必要です。自分たち独自の強みを発揮できない歯科医院は、競争相手としのぎを削る市場で勝ち続けることができません。つまり、患者さんから競争相手ではなく自分たちの歯科医院が選ばれる為の理由(=戦略)を明確にすることが必要だという訳です。

 1.ターゲットの選定
ターゲットの選定とは、「どんな患者層のどういったニーズを対象にするのかを決める」ことです。

自院の経営資源は限られており、すべての患者ニーズに対応することは現実的でありません。もし、あらゆる患者層の様々なニーズに対応しようとすれば膨大なコストが必要になります。

つまり、患者ニーズのカバー率と提供する価値/コストの関係の中に必ず最適値が存在するということです。この最適カバー率の存在を無視して患者数の拡大を図っても、コストの非効率を招き、効率が低下することにもなりかねません。

要するに、100%の患者さんを満足させることは不可能であり、満足させようとすればコストは無限大になります。したがって、自院の強みがもっとも活かせる患者ニーズを絞り込んで、効率的に成果を得ることが求められるのです。ただし、患者ニーズの小さ過ぎる領域を対象にしてはいけません。

 2.競争相手との差別化
差別化とは、ターゲットとする患者さんの頭の中に、競争相手とは異なる特別な価値があると認識させることで、競争上の優位性を確立すること。言わば、市場の中で独自の地位を築くことが目的です。具体的には、競争相手とは異なった治療技術の構成・治療費用の設定・提供体制の整備を考案します。

 3.資源の集中
資源の集中とは、「自院の経営資源をどう配分するのか」決定するのです。狙いを定めた領域に対して、人・物・金といった経営資源を集中的に投資することで、競争相手に対して量的な優位性を創りだすことにあります。集中の切り口は、患者層に集中するか、治療技術に集中するか、地域に集中するか、または組み合わせます。

 戦略を伝達するには言語化が必要
ここで言う言語化とは、構築した戦略を患者さんに伝達できるように言葉で表現すること。 この言語化には、それをターゲットにする患者層に伝えるキーワードとメッセージが必要です。

キーワードとは、たとえば「口元の健康美を提案する女性のための歯科医院」「子供の歯の健康を守る、お母さんが安心できる歯科医院」「ワンデイインプラント治療を得意とする歯科医院」などが考えられます。

このキーワードに必要なことは、「審美歯科を得意とする医院」「小児歯科医院」といった包括的なものではなく、ターゲットの絞り込みがしっかりと表現されていることです。

このキーワードがターゲット患者層に浸透すると、その話題が出たときに代名詞として想起されるようになります。ただし、キーワードが多くの人に認知され、さらにそのメッセージと医院名が結びつくまで、地道に発信し続けることが必要です。