HOME>強い組織の構築














 継続的な成果を導く強い組織の構築へ
診療モデルの決定とシステム化が完成したら、次は継続的な成果を生み出せるような強い組織を構築することです。歯科医院のような労働集約型のビジネスの場合は、組織力が業績をアップさせていく上で、重要な要素の一つになります。

事実、成功を収めている医院ほど、優秀な人材を採用するために投資をしたり、育成プログラムを整備したり、評価賃金制度を導入したりと、様々な組織力強化の手法を考えて実行しています。

激しい競争を勝ち続けるために、強い組織を必要としているのです。では、強い組織とはどういう組織なのでしょうか。それは、院長の考え方がスタッフに浸透している「価値観の共有された組織」ということができます。

強い組織をつくるために、まず実践すべきことは、医院の基盤となるビジョンを明確にして、スタッフを一体化していくことが必要です。そして、一体化が成功したら、スタッフを戦力化する人材育成システムの整備が次に行うべき行動です。

さらに、戦力化したスタッフを定着化して継続した活躍を求めるなら、スタッフがその取り組みについて、モチベーションが保てるような環境が必要になります。

それには、次の2つが効果的に機能する必要があります。1つ目は、組織内での役割責任やその能力に応じた公平な評価を実施すること。2つ目は、その評価に応じて、歯科医院の成果を配分することです。

 ビジョンでスタッフを一体化する
経営者である院長先生の最大の関心事は、「医院の未来像」でしょう。もちろん、それはスタッフにとっても、大きな関心事となります。

院長先生は、職場をより良い環境にしたいと考えています。仕事にやりがいがあって、信頼できるスタッフに囲まれて、業績も順調に伸びていく、そんな歯科医院を夢見ています。しかし、漠然と思っているだけでは、そんな歯科医院をつくることは出来ません。

理想を現実にするためには、経営者である院長先生が、歯科医院の未来像である「ビジョン」を明確にすることが必要になります。

このビジョンをスタッフと共有するには、適切なステップを踏むことが重要です。最初のステップでは、明確なビジョンの表明を行います。そのために、スタッフ全員を対象としたミーティングを行います。これがスタッフの意思統一をはかるキックオフミーティングになるでしょう。

第2ステップでは、組織全体の目標となるビジョンと連動した、パーソナル(個人)ビジョンの設定を行います。ビジョンを達成する為には、各スタッフがどんな役割を果たすべきなのかを、院長と一緒になって考えていただきます。

第3ステップでは、ビジョンを定着させ、スタッフ1人ひとりのベクトルをそろえていきます。そのために、ビジョンシートを作成し、常にビジョンを意識できるような仕掛けをつくることが必要です。

もちろん、スタッフ全員が同じビジョンを共有できるとは限りません。ビジョン共有のプロセスは、今後も一緒に仕事をするスタッフ選別のプロセスにもなります。

ビジョンによるスタッフの一体化に成功したら、人材の成長を促すためのシステムを歯科医院の中に構築することが必要です。

 キャリアパスでスタッフを戦力化する
スタッフを短期間で戦力化できない原因は、入ってくるスタッフのレベルだけではなく、育成する医院側にも大きな問題があります。

高い労働条件を整備することが難しい医院は、優秀な人材は採用できないという心構えで、平均点のスタッフが入ってきても、短期間で戦力となる人材育成システムを整備する必要があります。

その受け皿となるのがキャリアパスを中心とした人材育成制度の整備です。キャリアパスとは、理想とする人材像を必要となる能力と組織内での役割責任の観点からモデル化したものです。

入職してから3ヵ月後までに、どんな能力を身につけたらいいのか、主任になるには、この程度の能力と役割責任が求められるというように、入職してから最終役職になるまでの道筋をまとめた人材育成の設計図と考えてください。

キャリアパスが確立されると、その役職に求められる能力と役割責任が一目でわかるようになります。したがって、そのポジションに就きたいと考えるスタッフは、自分のキャリアアップを主体的に捉えるようになるので、研修や教育を受ける意味も理解できます。

医院として求める人材像を明確にし、必要な能力要件を設定する以上、当然それを身につけるための教育プログラムを用意しておかなければなりません。人材教育がきちんとプログラム化されると、教わる方としても、いま何が求められているのか、何を習得すればいいのかが、明確になりますから、戦力化のスピードが速くなります。

プログラムは、一旦つくってしまえば、新しい技術やサービスを導入した時などのマイナーチェンジですみます。したがって、スタッフ増員を視野に入れているなら、早いうちにつくってしまうのが賢明といえます。

人材教育をプログラム化する際に必要なのが、仕事の進め方を標準化することです。標準化とは、スタッフの誰がやってもあるレベル以上のサービスや対応ができるように業務をマニュアル化するということです。

目に見えない個人がもつ仕事の知識をマニュアルに記載することによって、組織の知識や経験に転換していきます。さらに、それを学習することで個人の知識に再転換するという流れをつくります。

マニュアル化が目指すところは、一番仕事の出来るスタッフの仕事の進め方にに合わせることです。つまり、マニュアル化とは、スタッフ教育の基盤を整備することといえます。

 評価賃金制度で優秀なスタッフを定着化させる
キャリアパスに連動した評価賃金制度の整備で、スタッフのモチベーションを維持して、優秀な人材を定着させるためのシステムを構築します。いくら人材の戦力化に成功しても、スタッフのモチベーションを持続できる環境がなければ、結局、優秀な人材は定着しません。

優秀なスタッフは、自分の能力や成果を正当に評価されることを望んでいます。そのスタッフの欲求を満たし、モチベーションを持続させるためには、評価賃金制度を整備しなければなりません。

評価制度は、各スタッフの能力や組織内での役割責任を、明確な基準で、公正に評価する仕組みと言えます。評価制度を導入すると、評価の方法を標準化できるので、人事の公平感が高められます。また、評価基準が明確になれば、スタッフから評価に対する信頼を得ることが出来ます。

そして、スタッフは何をすれば良いのか、どんな態度で取り組めばいいのかが、わかるようになり、明確な目標を持って、毎日の業務に打ち込めるようになります。

評価結果は、賃金あるいは職位などに反映させます。それにより、スタッフの能力向上や業績への貢献度に応じた報奨を行うことが可能になり、評価の高い優秀なスタッフのモチベーションは、ますます向上することになります。